「第一線監督者の集い:九州」にみる優秀事例|ダイハツ九州の人づくり
2011年3月に行われた「第6回第一線監督者の集い:九州」では11の活動事例が報告され
優秀事例にトヨタ自動車九州とダイハツ九州の活動が選出された。
ともに第一線監督者の中核的な役割である人材育成を中心に据え、その取組み姿勢や手法が高く評価された。
5年後を考えた人材育成 ダイハツ九州
ダイハツ九州大分(中津)工場製造部第2組立課第2係は、若く、勤続年数の短いメンバーが多い職場において、「すべての職制を自前で」という5年後の姿を見据えた人材育成の取組みが評価された。
大分工場は、群馬県からの工場移転で稼動開始したため、ベテランが少なく、応援要員で補っている面もある。
高橋栄寿係長は、メンバーを早期に育成し、5年後にはすべての職制を大分工場操業後のメンバーで固めることを目標にした。
そのためには、「考え、動ける組織」に育成しなければならない。高橋さんは、①変化を察知し自ら変革を起こせる、②コンフリクト(衝突)の場をつくり議論する、③他責型思考から自責型思考へ、④スキルではなく心構えを鍛える、⑤思考を走りつづけさせる、という5本の柱を設定し、きっかけづくりを心掛けた。
変化を察知するためのヒントにしたのは、ツイッターだ。メンバーとの個別面談に加え、その時どきに考えていることをつぶやきとして目安箱に投函してもらう。疑問や要望には、課長と3人の係長が回答、それを掲示板に張り出す。ヒントを得て、行動できるようにするためだ。指示待ち集団に陥らないためのコンフリクトについては、「係夕市」や「課内夕市」という集まりの場を設定。職長やリーダーが集まって形式張らない本音の議論を行えるようにした。
また、自責型思考を育むためのきっかけとしては、全職制を対象に基礎を習得する社内講習の「中津道場」に加え、自主勉強会を設けた。異なる見識を得ることで、考え方が変化し、それが次の行動につながるからだ。さらに、標準作業観察や自発的な安全衛生パトロールによって、メンバーのベクトルも一致するようになっていったという。次は、心構えを鍛えることである。「管理監督者にスキルは必要ですが、部下がついてこなければ意味はありません」と、高橋さん。
まずは心構えをもたせ、それを実践するなかで、おのずとスキルはついてくるものだと考えた。「必要なのは、想いを伝え、宣言することです」と、「がんばりボード」をつくった。
これは毎月、各職長が管理項目ごとに想いを「見える化」し、部下は退社時にどれだけ守れたか自己採点、各人が心構えをもてるようにするものだ。さらに「係新聞」を発刊し、部下に対する情報発信を続けた。マンネリに陥る可能性を排除するためのポイントを高橋さんは、「タイミングを見て、仕掛けを進化させることが重要です」と指摘した。これらの4つの柱を実践していくうちに、新たな想いが生まれ、思考が走りつづけるようになるという。約1年半の活動で、2人の職長が育って欠員を補い、3人のチームリーダーが生まれた。「活動のなかでの失敗はマイナスではありません。素直に謝れば、部下は頑張りましょうと言ってくれ、上司からは恐れるなと励まされます。仲間のことを考える職場にしたいのです」と、高橋さん。
がむしゃらというより、ソフトな取組みだが、強い情熱を感じさせる事例報告だった。
JMAマネジメントレビュー2011年5月号より抜粋