「第一線監督者の集い:九州」にみる優秀事例|トヨタ自動車九州の人づくり

2011年3月に行われた「第6回第一線監督者の集い:九州」では11の活動事例が報告され
優秀事例にトヨタ自動車九州とダイハツ九州の活動が選出された。

ともに第一線監督者の中核的な役割である人材育成を中心に据え、その取組み姿勢や手法が高く評価された。

中堅層をターゲットに育成実践 トヨタ自動車九州

トヨタ自動車九州の活動は、小集団活動を通じて、中堅・リーダー層のレベルアップをめざした。部品部部品課1係は、サスペンションをボディに固定するサスペンションメンバーの生産とロアアームの組付けを行っている。

いっそうの品質向上が求められる一方で、若い作業者が増えてもいた。

椎原久雄工長は、小集団活動を通じての職場力アップ、わけても中堅・リーダー層の育成をめざした。係内の2組それぞれで、リーダー層に引き上げる中堅層2人、次期職制をめざすリーダー層2人を選抜。必要となる能力を高める方針を両組の職長・班長に明示した。また、人は企業にとって財産と考えており、財産である人の能力を引き出し、発揮させるために体験と経験を踏ませ成長させることが、自分の役割と思っている。

同社の小集団活動には、タックル活動(いわゆるQCサークル活動)とTPM活動とがあり、これらを活用する。

タックル活動では、4つあるサークルのうち、1つのサークルが課の発表会でも4年間受賞経験がないという状態だった。そこで育成対象者をサークルリーダーとテーマリーダーに据え、活動を展開させた。

テーマは、設備停止の要因となる無人搬送車の異常。現地・現物で真因を追究させたところ、雨天時に組立台車のタイヤに付着した水が、センサーの読み取り不良を誘発していた。
センサーのメカニズム・原理を理解させ、繰り返し現地・現物で対策を検討させた。この結果、問題が発生していないラインを参考に、雨水の持ち込みが少ない経路への変更という解を得た。相談を受けた椎原さんは、後工程の工長と折衝し、経路変更を実現させた。「後工程は神様、太いパイプをつくることが重要ということも教訓になったと思います」と振り返る。他の改善と合わせ、無人搬送車の異常は、3カ月で激減した。

一方、TPM 活動についても、保全部門からの応援依頼に見合った育成対象者を選出、製造現場と保全との連携を経験させた。ターゲットは、可動率の低下に直結する溶接中のアーク切れの撲滅だ。現地・現物による検証で、金属粒子が綿ぼこり状になってモーターのガイドレットに蓄積、トーチ内に進入していることが判明した。保全や品質部門と連携して進入を防止するクリーナーを製作。また、トーチの清掃を標準化することとし、カットモデルを使った構造の勉強なども進めた。

この活動により、リーダー・中堅とも地力をつけ、リーダーは目標どおり班長にステップアップした。「若年層への意識づけは、第一線監督者が関与する必要がある半面で、関与し過ぎてもいけません。自分自身との葛藤という側面もあります」と、椎原さん。今回ピックアップした4人以外に対しても、「常に近くにいてコミュニケーションがとれるようにしています」と日ごろの心掛けを語る。

この事例は小集団活動により、コミュニケーションの場や経験を与える一方で、現地・現物でメカニズムの理解や論理的思考を追求した成果といえる。

JMAマネジメントレビュー2011年5月号より抜粋

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