デンソー福島その1|時間がかかっても、新人社員にやってもらう
「第5回第一線監督者の集い:仙台」最優秀事例賞を獲得したデンソー福島 製造部 1工場 生産1課 組付1係 1班 班長 秋吉隆一様、「第5回第一線監督者の集い:仙台」企画委員のデンソー福島 製造部 1工場 生産2課 課長 村上浩平様にお話を伺いました。
日本能率協会の斎藤 由佳と中本 尚吾がインタビューします。
(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
時間がかかっても、新人社員にやってもらう
斎藤
「第一線監督者の集い:仙台」で、見事最優秀事例賞に選出されました。おめでとうございました。
まずは、秋吉さんが取り組まれたラジエーターラインの早期安定流動とはどのようなものなのか、それを進めるにあたって、どのような課題があったのか、教えていただきたいと思います。
秋吉
私はデンソー福島の1期社員として入社しました。
入社後、車のエアコンを組立てるHVACラインを担当し、今回、新しくラジエーターラインを立ち上げるにあたり、私が担当になったのです。
カーエアコンはどちらかというと、部品を組み付ける製品ですが、ラジエーターというのはカーエアコンと違い、そういった部品を材料から加工し、600度の炉で熱を加えてロウ付けするなど、加工技術を必要としています。
このラインの立ち上げはデンソー福島にとって、大きな転換点でもありました。
多くの高度技能員をマザー工場のデンソー西尾から受け入れ、ともにラインを立ち上げることになったのです。デンソー福島にとっては初めての試みでした。
斎藤
普段はマザー工場の方といっしょになってラインを立ち上げることはないのでしょうか。
秋吉
福島からマザー工場へ数人から数十人で研修に出向き、経験を積んで戻ってきたメンバーが主体となってラインを立ち上げています。
斎藤
自分たちでラインを立ち上げているのですね。
秋吉
そうです。
今回は、マザー工場から班長さんや核となるオペレーターの他にも、一般の作業者もいっしょに来てもらいました。
そして、みんなでラインを1から作り上げていった点が、これまでと大きく違います。
立ち上げにあたり、安定流動の目標として稼働率85%、廃却不良0.5%、納入不良0%というマザー工場と同じ目標を掲げました。
その高い目標を多くの新入社員と達成させる為に、新人社員にものづくりの基礎をしっかりと教え込むことと、新人社員と高度技能員がいっしょになってラインを立ち上げられるようにマネジメントすることが、私の課題になりました。
斎藤
発表資料を見たところ、新人社員の方はものづくりの経験があまりない人が多くいたようですね。
これに対し、マザー工場からくる方は長年、ものづくりの経験を積んでいらっしゃいます。
ギャップがかなりあるように見受けましたが、どうでしょう。
秋吉
そこは本当に大きなギャップがありました。
そんな中でラインを新たに立ち上げることになり、高度技能員の方々が早く立ち上げようとするあまり、設備に触れる機会が多くなってしまいました。
その結果、新人社員が設備に触れて仕事を教わる機会が生まれにくくなったのです。
斎藤
仕事ができる高度技能員がいるから、逆に覚えられないというわけですか。
秋吉
そうですね。
そういったことがあったので、これではいけないと感じ、私の方から高度技能員の方たちと話をさせていただきました。
それと上司の村上課長にも「少し時間がかかるけど、新人社員にやらせてほしい」とお願いし、時間をかけてでもやってもらうことにしたのです。