日産自動車九州その2|One on Oneで壁を乗り越える
畑野
指示をする側から「自分ってどう?」と聞くのは、勇気がいることだと思います。
どんな気持ちで声掛けしたのでしょうか。
それに対し、部下たちの反応はどうでしたか。
山下
組が立ち上がったときは、目標や情報を共有するために全員を集めて度々、組内会議をしていましたが、個人とじっくり向き合うOne on Oneという1対1の対話を月一回取り入れるようにしました。
全員が集まった時の会議では、みんな自分の意見をなかなか出してくれません。
ところが、おもしろいものでOne on One の対話を繰り返していくことで、本音を語ってくれ、気持ちを少しずつ引き出せるようになっていきました。
One on One で話しても最初は、どこか目に見えない壁があるような、遠慮がちな反応をする部下もいましたが、回数を重ねるたびに「山下はこんなことを考えているのか。」となり、途中からいろいろな点で「協力してやるぞ」というように、みんなが私に近づいてくれました。
もちろんOne on Oneを始める以前にも部下たちとそれなりの信頼関係はあったと思います。
年長者の方達とも友人のような感じでコミュニケーションが取れていました。
しかし、監督者になり、工長という立ち位置で、周囲を見るようになり、さらに私が監督者はこうあるべきという理想論を持っていたことで私自身も部下の対し、壁のようなものを築いていたのかもしれません。
このため、意思疎通や信頼関係の構築が十分ではなくなったのだと思います。
畑野
ベテランから若手、期間従業員までいろいろな部下がいる中、少し壁ができていたのをどういう接し方をして相手の反応を変えたのでしょうか。
山下
少し話を戻しますが、監督者となった当初の個人と向き合う面談では、自分たちの方策や業務のフィードバックを中心に会話をしていました。
今の組の状況を説明し、達成するための行動ばかりを部下に求めていたのです。
しかし、One on Oneを始めてからは組織や会社の目標だけでなく、個人のニーズについても話すようにしました。
組織の目標と個人のニーズを組み合わせるような建設的でポジティブな面談です。
私の中ではプライベートの楽しみを仕事の目標に重ね合わせたいと考えていました。
最初のころの面談では、仕事について尋ねると9割方が「仕事とは楽しくない」という固定観念を持っていました。これは、弊社の職場が楽しくないということではなく、「仕事=楽しくないもの」という仕事へのネガティブな思い込みがあるようでした。
恐らく、他のいろいろな職場でも同様なのではないでしょうか。
しかし、「仕事=楽しくない」という根拠のないネガティブな考えをずっと持っていたら、会社に行きたくないと考えたり、毎日を苦痛に感じることになりかねません。
そういうネガティブな考えに固執しているべきなのか?そんなに固執する必要があるのか?という問いかけを続けたところ、次第に今の仕事を楽しくしなければいけないという考え方に変わってくれました。