日立金属その4|周辺視目視検査とは?
斎藤
改革推進部の関わりもあって、徐々に職場の雰囲気が変わる中、これまでにない新しい検査方法も生み出していったのですよね。それが周辺視目視検査というものですが、どういったものなのでしょうか。
植田
これまでの検査方法は、「欠陥を探せ」というもので、わずか2度という狭い中心視野で、集中して見るというものでした。
しかし、そうすると高い集中力が必要で、目が疲れたり、肩がこったりなど健康の面でもいろいろな不都合が起こっていたのです。
逆に、集中せずにボーっと見ることで違和感に気付くというのが「周辺視」です。
周辺視目視検査の専門家である佐々木章雄先生に指導いただき、周辺視目視検査に挑戦することにしました。
先生からは、これまでの検査方法に対し嬉しいダメ出しもありました。つまり、悪いのは作業をする人なのではなく、方法なのだということです。
メンバーをみると、これまでのやり方を変えたくないという人もいましたが、周辺視目視検査に積極的にチャレンジする人もでてきました。
そこからいろいろな施行錯誤がはじまりました。半年くらいかけて皆で案を出し合い、条件出しをしました。
私はもっぱら「欲しいものがあったら言って」とか、「時間が欲しかったら言って」という話をするだけ。知恵を出したり、手を動かしたりするのは現場のメンバーに任せました。
彼らが工夫して、ストライプ状の光を当てると欠陥が浮き出て見える仕組みを考えたのです。
斎藤
ということは、誰にでも検査ができるようになったのですか?
植田
そうです。今はすぐに欠陥が見えます。
いろいろなことを提案したけれど認めてもらえず、もうやる気をなくしたり、会社を辞めようとしていたり、精神的に不安定だったようなメンバーが、それを考案したのです。
ですからその方法が見つかった時は、非常に嬉しくて涙が出ました。
その後、新しい検査方法を社内報で大きく取りあげられたり、外部の催しに参加させてもらったりと、社内外からも評価いただきました。
それが、メンバーにとっては大きな成功体験となっているのです。
斎藤
こうした成功体験経て職場はどのように変わりましたか。
植田
本音の会話ができるようになったことが大きいと思います。
どちらかというと、個人プレーが多かった職場が、チームへの誇りや同僚愛を感じ、自主活動も活発になっていきました。
肩たたき、ラジオ体操、設備清掃など、毎日、全員で取り組み始めるようになっています。
(その5につづく)