JFEスチールその6|熱延台車トラブルに対する対応とは?
斎藤
そういう職場改善に向けた取り組みを進めている間にも、熱延台車トラブルについても手を打ってきたわけですね。
南部
職場の中にはグループが3つか4つあります。
それぞれがテリトリーを持ち、仕事をしています。
熱延台車はそのうちの1つのグループだけが管轄する設備です。
そこのグループはリーダーが交代する一方、仕事が非常に忙しくなっていました。
最も多忙なグループだったのです。
そこだけでトラブルを撲滅するのは厳しいと感じたので、別のグループからベテランを1人抜擢し、編成を変えました。
普段はあまり取らない方法ですが、あえてそうしました。
斎藤
その種のトラブルは普通、グループ内で解決するのでしょう。
南部
グループ内で解決するのが常です。
でも、その時の状況は、編成を変えることで早期に解決できると判断しました。
ただ、編成替えのメンバーについては非常に頭を痛めました。
斎藤
どうして編成替えに踏み切ったのでしょう。
南部
ベテランの中に熱延台車の扱いに長けた人物がいたからです。
その人物はグループが変わり、別のグループで働いていましたが、こういう状況なので最も詳しい人物を入れた方が良いだろうと判断しました。
トラブルが起きたグループで、みんなのモチベーションが下がっていることも、その判断を後押ししました。
でも、人を出すグループが疎かになってはいけませんから、対策をあれこれと考えました。
最初は熱延台車に最も長けている人に助けてもらおうとしたのですが、そのうちに教育のために若手も担当につけておこうと考えるようになりました。
ただ、人材を出すグループからは、不平不満がかなり出ました。
若手を出すグループのリーダーから「若手を連れていかれると困る」といわれ、こちらは「ここをやらせることがこいつのためになる」と反論したのですが、リーダーと葛藤がありました。
斎藤
ベテランの方は快く受けてくれたのですか。
南部
こういう窮地なので「いいよ」といってくれました。
それでもベテランがいるグループにもリーダーがいます。
そのリーダーの承諾を得ないといけませんから、そこは非常に難しかったです。
斎藤
人事権を行使するのではなく、説得したのですか。
南部
説得です。
それが職場の作業長の手腕です。
基本的にそのグループで解決するのが原則だとしても、そのときは人を移さないとこの場を切り抜けられないと感じていました。
納得を得て人を移したつもりですが、なかなか苦しいところがありました。
やはり、自分の部下を抜かれるのは、リーダーにとって厳しいものです。
人を抜く代わりにそちらが忙しいときに応援を出すと約束することなどでどうにか切り抜けました。
(その7につづく)