日産自動車九州インタビューその3|技能者教育の取り組み方とは?
第12回 第一線監督者の集い:福岡(旧第一線監督者の集い:九州) 企画委員の日産自動車九州 iFA推進室 現場管理推進グループ シニアスタッフ 野田安則様にお話を伺いました。日本能率協会の成富一仁がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
技能者教育の取り組み方とは?
成富
御社の技能者教育はどのように取り組んでいらっしゃいますか。
野田
当社の教育体系には、階層別教育と技能向上施策があります。
階層別教育とは、テクニシャン教育の初級、中級、上級、さらに選抜教育として、指導職初級、上級、工長マネジメント教育となります。
入社して3年目ぐらいで初級、5、6年で中級、それからある程度の資格を持つ人が上級といった感じです。
この階層別教育はどちらかというと、Off-JTになります。
同時にOJTでは、技能向上施策というものがあり、仕事ランクがそれぞれアップしていくときに、その職種に合った技能で課題を与え、複数の項目に沿って検定を行って行きます。
そうした両輪の教育を体系立ててやっているわけです。
指導員から工長、すなわち監督者になるときに受講する教育が指導者の上級、工長から係長になるときに受講する教育が工長マネジメント教育で、それらは選抜された教育の形を取ります。
ほかには自己啓発があり、TOEICやパソコン教室など自分で選んで受けられるようになっています。
成富
少し自己啓発の中身についてお聞きしたいのですが、昨年の第一線監督者の集いで最優秀事例に輝いたTOTOアクアテクノ様の久野理恵さんという方がいらっしゃいます。
その方は実際に自己啓発でコーチングのセミナーを受けてみて、それからご自身として、また監督者としてのマインドセットに変化があったそうです。
その結果、がむしゃらにやってきたそれまでの行動が変わり、周りを生かすようになったという話をされていました。
そういった気づきを与えるという意味も込め、工長研修や指導者向け研修を組んでいらっしゃるのですね。
中身は技術寄りなのか、マネジメント寄りなのか、それともコーチング寄りなのでしょうか。
野田
テクニシャン教育の上級までは、基本的に現場管理向けというか、ものづくりに特化した教育になります。
少し変わってくるのは、工長のところからです。
工長のところは、まず積極的傾聴法から始まり、ケーススタデイやロールプレイング等監督者の立場や部下の立場で考え、学びますから、コーチング系とマネジメント系に当てはまります。
いかにチームワークで目標を達成していくか、部下をどう巻き込んで仕事を進めるかが、ポイントになります。
5日間の集合教育に加え、今年からはプラス5日間のAPWの教育もしています。
それから1週間をかけ、他の職場にベンチマークに行きます。
そこで自分と同じ職種のところへ行き、どんなマネジメントをしているのか、どんな違いがあるのかをその目で見てもらいます。
戻ってきてからは、学んだことや他の職場で見たことを踏まえ、自分の職場で改善活動を進めて発表します。
これが工長教育の概要です。
成富
今、話をお聞きしていますと、かなり長期間しっかり時間を取っていらっしゃいますね。
野田
工長教育は1カ月半~2ヶ月になります。
成富
凄く長いですね。
なかなかぜいたくとも言える研修に見えます(笑)。
野田
その期間はずっと研修に没頭しています。
九州からの教育受講者はスーツケースを抱えて関東の教育センターに出張となります。
今年度から、APWの教育が加わったので、3週間帰ってこれないという本当に長丁場になりました。健康には十分注意するよう指導しています。
成富
色々な拠点の方と話ができますし、良い機会といえば良い機会ですね。
野田
やはりそこが1番です。
人脈を作ることは自分の業務ですごいプラスになります。
例えば、自分が困ったときに、同じ研修を受けた人に相談したり、助け合ったりすることができます。
現実にそういうことをやっていますので、非常に効果が出ています。
成富
驚きました。
とても充実していますね。
野田
うちの教育は結構な日数をかけてやっています。
本当に「人に優しいというか、人を財産」と思っているところです。
同じように工長から係長になるときも、先ほど申し上げた工長マネジメント教育が存在します。
本教育も他工場から選抜された方々が教育センターに集合し、1週間缶詰めになって学びます。
部下を巻き込んでどう仕事をしていくかについて学びますが、それに加えて経営視点のマネジメントにも取り組んでいます。
例えば、生産運営の仕組み、労務管理、現実に製造現場で発生している課題をテーマにそれをグループ内で話し合い、答えを出して発表し合うという形を取っています。
「自分が係長だったらどの様に対応するか?」全てこの視点で論議します。
トレーナーは例題と納期を指示すると、その場を離れます。定期的に確認し大きく方向性が乖離していれば軌道修正しますが、基本は受講者にやらせます。リーダーシップを取る者、冷静に見極める者、まとめ役夫々の個性が出て楽しいですよ!
自分たちで考え、自分たちで答えを導いていく形を取っているのです。
1週間の集合教育後、職場へ戻り3週間~4週間で改善活動を行い成果発表を行ないます。
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