日産自動車九州その3|夢実現シートとは?
畑野
具体的に個人のニーズはどんなものが出てきましたか。
組織のニーズと組み合わせることができた実例を教えてください。
山下
仕事をするに当たり、「なぜ仕事をしているのか」を振り返ってもらいました。
多くの方が「お金を稼ぐため」とか「生活のため」といっていました。
生活のためだとしたら、「生活の何が大事で、その大事なものを守るためにやっているのか」、それとも「大事な夢をかなえたいからやっているのか」など、いろいろと考えられると思います。
私の場合は子どもが4人もいますから、妻と子どもたちを幸せにしたいという強い想いが仕事に繋がっています。
妻を幸せにしたいために、喜びを多く感じてほしいと考えています。
私の妻はキャンプが好きなので、仕事を頑張ってキャンプグッズを買い、大自然のなかを家族6人で楽しむ!というように仕事を何のためにしているのか?という背景を今回の事例発表で挙げたシートなどを活用し、自分の楽しいことが仕事につながっていることに気づいてもらえるようにしたのです。
畑野
シートについてもご説明いただけますか。
山下
そのシートは夢実現シートといい、夢をかなえるために何をしなければならないかを文字で体系的に、さらに視覚的に分かるようにしたものです。
真ん中に自分の夢があり、夢をかなえるために必要な大きな項目でその周囲を囲います。
QCの特性要因図の骨にあたりますね。
今度は大きな項目をピックアップし、それをかなえるのに必要なことを周囲に書き込んでいきます。
そういう作業を続けていると、夢の実現に向けた必要な事が分かり、これからなすべきこともはっきりしてくるわけです。
畑野
シートに書き込む作業を続けた結果、見えてきたことはあったのでしょうか。
それを通して対話を重ねることで、相手の反応は変わりましたか。
山下
最初に気づいたのは、年配の人は仕事に対し、簡単にいうとあまり大きな目標を持っていないことでした。
多くが定年退職まであと何年だから、それまで無事にやり遂げればいいと考えているのです。
ですから、仕事に対しては身体的・精神的にも無理をせず、若者のように大きな夢も描きません。
逆にいうと、仕事中にけがをせず、できれば残業なしで早く帰りたいと考えていました。
それなら、その人たちがけがをしないようにエルゴ改善を行い、身体に負担のかかる仕事を少しでも減らしていこうと計画しました。
残業せずに早く帰るためには、今の仕事を少しでも効率よくし無駄な残業を排除しなければなりません。
そこで、就業時間内で仕事が終えるように、何が無駄で効率化するにはどうすればいいか、必要なことを精査するように考えていったのです。
一方、若手は車がほしいとか、家を建てたいなど金を稼いで少しでも多くの大きな夢を叶えたいと思っています。
そのためには社内で出世するのが早道です。
そこで、若手が出世するために今後どんな能力が求められているのか、さらにはその能力が職場に還元できるように考えていきました。