トヨタ自動車インタビューその3|今回の発表を通じて、一番伝えたかったこととは?
職場のメンバーができないのは、自分ができていないから?!基本となる行動を、自分が手本を見せてやることで、部下が動けるようになる!自分ひとりだけで頑張るよりも、一緒にやろうよ!という姿勢で、周りを巻き込み、自分へ賛同者を増やす。
第一線監督者の集い:名古屋 発表者のトヨタ自動車株式会社 伊藤敦志さん(本社テクニカルセンター ボデー統括部 ボデーCAD課 GL)に日本能率協会事務局(JMA)がお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
今回の発表を通じて、一番伝えたかったこととは?
JMA
今回の発表の中では、グループ、若手、中堅、ベテランスタッフに対して、いろいろな動機づけを行っていますが、それらも含めて今回の発表で一番伝えたかったこと、あるいは苦心された点があればお聞かせください。
伊藤
一番伝えたかったことは「行動力」です。
僕は社内で、アドバイザーとして新入社員の教育や、若手教育の先生をする機会がありました。
トヨタには、「トヨタウェイ」や「私たちの心構え10箇条」というものがあり、もちろん教育の場でもそういった言葉を伝えます。
でも、これまでさんざん伝えてきたけれども、どうして職場のメンバーはその言葉どおりに行動することができないのだろう、という疑問も一方ではありました。
しかし、それは、もしかすると、自分が行動できていないからではないか、という考えが浮かんできました。そこで先ずは自分が率先して動くようにしました。
自分の背中を見せていく、ということから動き出し、それについてきてくれたメンバーは、僕の背中を見ながら育っていき、そうするとメンバー自身の引き出しが増えていきます。僕も決して引き出しが多いほうではないので、行動をアレンジできるぐらいのメンバーが出てくれば、今度はそれを自分の中に吸収して、相乗効果で成長していければいいな、と思っています。
「第一線監督者の集い」に参加して困っておられる方々の中には、職場に、ふんぞり返って上からものを言うだけという方もいらっしゃるのかもしれないですね。
例えば、よくあるのが、「そんなの基本だろう?」などと怒る上司がいますよね。でもそれは、基本を教えていないから、基本を示せていないからできないということなのです。
あるいは「そんなことはボトムアップでやるんだ」といった話もあると思うのですが、ボトムアップを強要している上司は、やはり自分から行動で見せることによって、自然にボトムアップできる職場にしていくことが必要なのではないでしょうか。
基本となる行動も、自分が手本を見せてやることで、部下が動けるようになるというところを汲み取ってもらえればいいかなと思います。
周りから見たら、お前は動き過ぎだとか、もう少し人に任せろと言われる部分もあるかもしれませんが、これはもう僕のポリシーともいえるところです。
やはり100人いれば100人のやり方がありますし、引き出しはたくさん与えたほうが自分たちの勉強にもなるので、その点はしっかり伝えたいなと思いながら、まとめていったという感じですね。
JMA
ほかのお会社などで、背中を見せようとしているのだけれども、なかなかそれを見て学んでくれないだとか、そもそも気づかない若手も最近では増えてきているといった話を聞いたりするのですが、そういったことで、何かご苦労はありましたか?
伊藤
背中を見せても動いてくれないことへの理由には、やはり自信がないですとか、何か抑えつけているものが影にあるとか、一緒にやろうよ!という姿勢が感じられないのかもしれませんね。
そのあたりは、僕も順番を考えました。通常ですと、若手を育て、中堅を育て、ベテランを育てるという順番になりそうですが、とりあえずベテランは最後に回して、一番年齢の近い、僕の気持ちをわかってくれるであろう中堅を育て、そしてそれを若手に伝承していくことにしました。
中堅と若手が頑張ることで、ベテランは置いてきぼりになってしまいますが、でもそうはいっても、若手は、中堅、ベテランに頼る場面が多くなりますので、そこはベテランを立てて、ベテランに頼っていくという形の方策を考えました。
自分ひとりだけで頑張るよりも、周りに自分の味方・賛同者が増えていくような状況に持っていくといいますか、巻き込んでしまうというのもひとつの手かなと思いました。
それが今回は、たまたまピタッと合ったのかなとは思っていますが、いろいろ考えて動くようにしました。
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