長野オリンパスその3|大きなハプニングから学んだこととは?
斎藤
そんなときに、生産を停止しなければならないという事故があったのですね。
下村
はい。ちょうど4月から大きな新製品が展開され24時間稼動で生産をしなければいけないほどの仕事量でした。われわれにとっては非常に売り上げが伸びる製品だったのですが、そこで不具合が発生してしまいました。
不具合の内容は本当に単純で、標準どおり検査をしていれば防げたものだったのですが、未検査のものが流出して生産停止となり、大きく売り上げを落とす原因になってしまったのです。
斎藤
職場の人間関係もしっくりこないし生産停止で目標達成からまたかけ離れてしまうというハプニングもあり、かなり悩まれたと思うのですが、そんなときに上司の一言があったそうですね。
下村
当時私はチームリーダーを担当していたので、直属の上司であるグループリーダーの方からアドバイスをいただきました。
斎藤
どのようなアドバイスだったのでしょうか。
下村
『ただ楽しくやっていても本当の笑顔にはつながらない、リーダーとしてメンバーを笑顔にするには何をすべきか考えてみろ』ということです。
最初は正直意味が分かりませんでした。
それまでは楽しくやっていれば職場が活性されて笑顔になる、という仕事スタイルでやっていましたが、そこにこういうアドバイスをいただくと「あれ?じゃあ何が足りないんだ」と非常に悩みました。
当時子どもが生まれたタイミングで、私自身も子どもの世話をしたいという思いがあったのですが、仕事が忙しくて帰れない日々が続く中で悩み続けた毎日でした。
そんなとき、妻が私の背中を押してくれました。
斎藤
それはどういうことですか?
下村
私の気持ちを知っていたかわかりませんが、
『家庭は何とかするから、あなたは仕事に集中して』と妻に言われたことです。
そのとき、あらためて家族を守りたいと強く思ったと同時に、メンバーにも家族がいて、その家族も守ることが、チームリーダーとしての責任の重さだと気づいたのです。
そのぐらいの覚悟を持たなければいけないと強く感じました。
(その4へつづく)